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働く女子必見:ずっと独身でいるつもり?(祥伝社) ネタバレ&感想 おかざき真里×原案:雨宮まみ

ずっと独身でいるつもり?

おかざき真里×原案 雨宮まみ

祥伝社

 

36歳、独身、結婚してない私って、「かわいそう」なの?

親から「かわいそう」と言われてしまったまみ。

「ひとり」の恐怖から、元カレとの再会に揺れる由紀乃。

仕事中心、恋愛はおざなりなシミズ。

やりがいのある仕事に、好きなものに囲まれた暮らし。

そんな毎日も、「独身」だったら幸せじゃないの?

 

現代(いま)を生き抜く彼女たちが抱える不安、寂しさ、希望をていねいに描き出す。

全女性共感必至のオムニバスストーリー!

 

umoriya2.hatenablog.com

 

 

story.2

いちばん寂しい女ってさ、ひとりぼっちのことじゃなくて、「ひとり」に耐えられなくて誰とでもすぐくっついちゃう女だよね。

 

二人目の主人公「由紀乃」

 

「特集 復活愛 昔の男がカッコ良くなって帰ってきた!」

立ち寄ったコンビニにあった雑誌のキャッチコピーが目に入る。

「そんなものかなぁ」と特に気に留めるでもなく雑誌を棚に戻す由紀乃。

 

後日、同窓会に参加していていると、同窓生である一人目の主人公「まみ」から声を掛けられる。

近況を報告し合い談笑する二人。

そこに赤ん坊を抱えた同窓生達の楽し気な声が耳に入る。

その光景を温和な表情で眺める二人。

しかし、自分には縁のない世界と言わんばかりに自虐気味に料理をドカ食いする由紀乃。

まみから男性関係を問われるが、直近で付き合っていた人とは既に別れたことを伝えると二人の間に凍てつく風が吹き荒れる。

不用意な問いかけをしてしまったことを謝るまみ。

気にしないでと言いつつも、元彼とのことを消化しきれていない由紀乃。

そんなに好きではなかったはずなのに。

ひとりで部屋のいると絶望してしまう自分を思い出す。

「この歳の失恋は命にかかわる」

「つらい」

「お願い。もう誰でもいいの、今、私を、、、。」

元彼と行くはずだったドバイ旅行のキャンセルもまだできていない。

冗談ぽくまみを誘ってみるが、そんなことをいきなり言ってもスケジュールが合うわけがない。

話は「老後」のことにまで及んで、由紀乃からまみへ

「じゃあ、老後!」

「老後一緒に遊んでよ。一緒に住むでもいいよ」と冗談を言う由紀乃。

「互助会か~」と微妙な表情でツッコむまみ。

その光景を子連れの同窓生が何気なく見ている。

 

そこへ、同じく同窓生である大学時代の元カレが声を掛けてきた。

「元カレがカッコ良くなって帰ってきた!」

気持ちが高揚する。

元カレが脂ののった鮭状態で川に戻ってきた。

そんなことを考える自分を獲物を捕まえる熊に例えて心の中で自らにツッコむ。

 

数日後、同窓会で再開した元カレと食事をする由紀乃。

二人でよく行ったレストランで昔話に華が咲く。

「あれ?」

「何か楽しい」

「てゆうか、『アリ』かも」

「線香花火みたいに派手じゃないけれど、昔をゆっくり思い出すみたいな」

「『味わう』みたいな」

そんな穏やかな時間を噛みしめている由紀乃へ、元カレから悪気のない余計な一言。

「またそれ、まだナッツよけているの。相変わらず神経質だなー。変なところで」

その一言で我に返る由紀乃。

「あーーーーーーーー。そうだった。そうだった。この人は形容詞が全部毒を含んでいてネガティブなのだった」

「素でそういう人なので、直らなくて」

「しかも微妙な悪口なので、その都度指摘できなくて、無意識の中に少しずつ溜まっていって、じわじわ浸食されていって」

「だんだん自分のことが嫌いになって、そして一緒にいるのに息が詰まって。そうだった。そうだった」

「別れたのには理由があったのだった」

 

「がっかりしたのは、そんな記憶も頭にないくらい、『ひとり』が怖かった自分にだ」

 

元カレとの食事を終え、ひとり家に帰る由紀乃。

キャンセルできずにいたドバイ旅行へ行くことを決める。

 

ドバイに到着した由紀乃は、煌びやかなドバイの景色に心が洗われる。

「なんだ。私。東京の知り合いだらけの中であんなに『ひとり』が怖かったのに、こんな誰も知らない誰もいない砂漠の真ん中で満喫できているよ」

「『ひとり』がしんどいわけじゃないんだ」

 

旅行を終え、日常生活に戻る由紀乃。

「『ひとり』でも大丈夫なんじゃん」と思えたことは、一時の高揚感がもたらした幻みたいなものだとわかってはいるが、それでも前を向く由紀乃。

 

「でも一瞬大丈夫って思えた。それで救われるなら、その感触を持っていてもいいんじゃない」

 

ある日、仕事の移動中に同窓会で見かけた子連れの同窓生と偶然会う。

「同窓会ぶりー。この辺よく来るの?」

軽い挨拶を交わし、たわいもない雑談をしていると、ふと子連れの同窓生が不思議なことを言ってきた。

「ね~。この前の同窓会で言ってた歳をとった時の互助会私も入れてよ~」

「何言ってんのよ。結婚してる人が」一瞬面食らいつつも、由紀乃がツッコむ。

「いや~。いわゆる『孤独死』のほとんどが既婚者なんだよ~」

 

その言葉を聞いて、既婚者も似たようなことで悩んでいることに少し救われたような気がした由紀乃。

 

「だから、小さなかけらを集めて今日を生きのびて行きましょう」

そんなことを思う由紀乃であった。

 

 

感想

ひとり身の人間には、身に染みる内容だった。

ちなみに私は男であるが、このての悩みに性差はないようだ。

自分自身の生き方は自分で決めてきて、後悔はないが、周りの友人たちが子どもを作り、子育てに励んでいる話を聞くと、変な焦燥感や不安に駆られる時はある。

 

ただ、既婚者には既婚者の悩みがあり、やはり悩みは人それぞれで、悩みながらも精一杯生きていくことが大事なんだと改めて思う前向きな内容で良かった。