働く女子必見:ずっと独身でいるつもり?(祥伝社) ネタバレ&感想 おかざき真里×原案:雨宮まみ
ずっと独身でいるつもり?
おかざき真里×原案 雨宮まみ
祥伝社
36歳、独身、結婚してない私って、「かわいそう」なの?
親から「かわいそう」と言われてしまったまみ。
「ひとり」の恐怖から、元カレとの再会に揺れる由紀乃。
仕事中心、恋愛はおざなりなシミズ。
やりがいのある仕事に、好きなものに囲まれた暮らし。
そんな毎日も、「独身」だったら幸せじゃないの?
現代(いま)を生き抜く彼女たちが抱える不安、寂しさ、希望をていねいに描き出す。
全女性共感必至のオムニバスストーリー!
story.1
story.2
story.3
三人目の主人公は、仕事中心・恋愛はおざなりな「シミズ」
同窓会で同窓生である一人目の主人公「まみ」から声を掛けられる。
以前、シミズはまみに同窓のよしみで仕事を依頼しており、その仕事が順調に進んでいることを明るく報告するシミズ。
その報告を聞きながら、仕事に一所懸命なシミズの姿勢に微笑むまみ。
そんな二人のところに同窓生の既婚者たちが話かけてきた。
「あーーー。まみ~。シミズ~。久しぶり~」、「え~。二人ともまだ独身なのー?」
にこにこ聞きながらも心の中では「きたきた」と思う二人。
「どうしてだろうねー?二人ともかわいーのに」
「理想が高すぎるとか?」
「出会いがないとか?」
「どうしてだろうねー?」
「不倫だけはやめときなよー」
矢継ぎ早に好き勝手なことを言う既婚者たち。
そんな余計なお世話には慣れているのか、笑って聞き流しながら「こういうの微妙な歳を過ぎるとオヤジは黙って、同性の方が言い出すんだよな」と心の中で冷静に分析するシミズ。
犯罪ではないのだから、原因究明はしてくれなくていいよ。
「やっぱ仕事しすぎじゃない?」
一瞬、笑顔が消えるシミズ。
そんなシミズにお構いなしに、ペチャクチャ好き勝手に持論を展開する既婚者たち。
「仕事でいっぱいになっちゃうとねー」
「バリバリ働くって結局殺伐としちゃうからねー」
「自立できちゃうとねー」
そんな既婚者たちの薄っぺらな話には気にも留めず、時間を確認するシミズ。
「あ!もうこんな時間、行かなくちゃ」
「どこにっ!?」オーバーリアクション気味に尋ねる既婚者たち。
「仕事」カッコよく言い切るシミズ。
その姿に微笑みながら手を振り送り出すまみ。
勤務先のデザイン事務所に到着するシミズ。
「ただいま戻りましたー」
仲間たちが夕食の出前のメニュー選んでいた。
「お!ちょうど良かった。カツ丼?牛丼?」
「親子丼」間髪入れず返すシミズ。
みんなで食事をしながら、「よーし!今日は終電までには終わらせる!」自分に気合を入れるシミズ。
そこへ残念なお知らせが。
「あっ。シミズー。今メールで直しが来たぞー。」
クライアントからの修正依頼メールだった。
美味しい親子丼の味が一気に哀しみの味に変わる。
「せめて、ごはん終わってから言って、、、。」
終電に乗れないのが決定したと思うシミズだが、
「まあいい。やれば終わる!」とすぐさま切り替えて、直しに取りかかる。
同僚の男性も週末に行く音楽ライブのために頑張るとのことだった。
「こうやってほんの少しの小さな楽しみや目標を作ってそれを支えに一週間を乗り越えて行く」
「それはまぁ自分で鼻先に人参をぶら下げて自分で走る馬車馬みたいなもんだと思うけど」
"”えっーーーー!まだ独りなの?""
同窓会で既婚者たちに言われたセリフが頭をよぎる。
うすく付き合っている人はいる。
前に会ったのは3週間前
セックスの最中に寝てしまいパートナーは先に帰ってしまった。
そんな状況でもラブホテルの大きいベッドでひとりで寝れることの方がありがたかった。
我ながらサイテーだと思うシミズ。
「誰かと過ごすよりひとりで寝てたいって。しかもそれを忘れてるって」
そんなことを考え反省しながらも、ふいに仕事についてのアイデアが浮かんでくる。
そのアイデアを基に追加提案資料の作成に取りかかるシミズ。
「こういう『こだわり』って睡眠時間を減らすだけのいらないものかも知れないけど、思いついちゃったからやってみる」
後日、クライアントから「提案された新しい案じゃなくて前ので進めてほしい」との連絡があり、へこむシミズ。
吹けば飛ぶような『こだわり』。
決して世界を救ったりしない。
せいぜい自分を守る程度、しかもすぐなくなる。
もう「夢」とは言えない。
続けている意地のようなものかも知れない。
そうまでして続ける意味が、、、。
そんなことを考えていると、押し寄せるように新たな仕事の依頼が。
「ええっ!?直しと追加と新規!今日中っ!?この時間から!?この量を!?」
「さらばライブ、、、。」週末に行く予定だった音楽ライブをあきらめかけた同僚の男性。
その男性を鼓舞するシミズ。
「ためだよっ!今ライブあきらめかけたでしょ。だめだよ。突発的な仕事は日常茶飯事だからいちいちあきらめちゃいけない。」
「仕事が忙しい時ほど遊びをあきらめちゃいけない!」
「みんなでやれば終わるから」
職場のみんなで怒涛の勢いで取り組んで何とか形になった。
「行けるよライブまだ終わってないよ!」同僚の男性に声をかけるシミズ。
「うん。じゃ。二人抜けます」と言ってシミズの手を引っ張って外に出る同僚の男性。
「か、彼女と行くんじゃ?」
「開演に間に合わなきゃ見る価値無しとか言って、キャンセルされた」
ライブを存分に楽しみ、お酒を片手に歩きながら帰る二人。
同僚の男性がケータイの留守電に気づく。
「やったー。クライアントチェックOKだったって!」
「やったあーーーーーーーっ」二人で喜び、お酒の缶を合わせる。
喜びを爆発させるシミズだったが、ふいに静かに語りだした。
「あたしさー。仕事が好きなんだよ」
「徹夜ばっかだし、報われないことも多いし、くやしかったり、悲しかったり、無力だったりするけれど」
「だからこそさー。その分ビールが美味しいっていうか」
「ライブも楽しみっていうか」
「だから仕事って、恋愛とのトレードオフじゃないと思うんだ」
「無理したってしょうがないし、大事にしたいし、このままの道でって思うんだよ」
まるで人生そのもののような、、、。
というか人生だからね。
感想
4年ほど前に初めてこの本を読んだ時は、私もサラリーマンで残業時間が月80時間を超えることもざらにあるぐらい働いていたので、どこか自分と重ね合わせて、このシミズのエピソードが一番好きだった。
クライアントの都合でコロコロ仕事内容が変わるところなど、どの業界も一緒なんだなぁと思って親近感が沸いたものである。
ただ、サラリーマンを辞めた状態で改めて読み返してみると、
「ほんの少しの小さな楽しみや目標を作ってそれを支えに一週間を乗り越えて行く」
「自分で鼻先に人参をぶら下げて自分で走る馬車馬みたいなもん」
日常のちょっとした幸せに気を紛らわせて、またバリバリ働くという働き方に共感できなくなっていた。
もちろん、一所懸命働いている人を否定するつもりはない。
ただ、シミズに対しては、「あなたの言うとおり仕事って何かとのトレードオフではないと思うけど、今の働き方だと結果的にトレードオフの状態になっているので、もう少し肩の力を抜いても良いんじゃない」と声をかけてあげたい。
本人も人生について考えることを放棄しているわけではなく、そのあたりに悩みながら頑張っているので、まったくもって余計なお世話だとは思うが、、、(同窓会の既婚者たちみたいになってしまってるな)。
性別、未婚・既婚など問わず、仕事に一所懸命な人たちのやりがいが搾取される世の中ではなく、多様性を尊重し合いながら一人ひとりが輝ける世の中になって欲しいと切に願う。